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行きたい学科に行けなかったひとへ

進級が決まった皆さん、おめでとうございます。

わたしは2015年度に総合入試で入学し、行きたい学科に行くことができなかった学生です。おかげで後悔の多い学部時代を過ごしました。しかし、修士課程から軌道修正して研究が楽しくなり、この春からは博士後期課程に進学します。

博士でより興味に近い研究をするために、大学も研究室も大きく変えました。研究室選択にあたって自分が修士一年目にやったことは学部時代にもできたことばかりで、もっと早く始めておけばよかった、行きたい学科に行けなくても色々動けたことを知っていれば、と修士の間中悔やんでいました。

そこで、あくまで一例にすぎませんが、自分の経験をまとめることで、同じような状況にある誰かの役に少しでも立てればいいなと思ってこの記事を書くことにしました。

まだ行きたい学部学科が決まっていない総合学部の新入生にも、参考にできそうなところ(弊研究室に出入りしている学部生の話など)がいくつかあるので、もし良かったら読んでみてください。

 

 

進学を考えるにあたってやるべきこと

行きたい学科に行けなかった際にまず考えるのが、編入および再入学だと思います。わたしも考えました。しかし、その道はかなり険しく、再入学の場合はお金もバカになりません。かつては大学内の行けなかった学科に編入できるという穴があったようですが(!)、わたしの世代では既にその学科の最低移行点を超えなければ編入できないようになっていました。ただし、これはわたしが志望していた生物系でしか調べていないので、一応調べてみたらいいと思います。わたしは編入も再入学も諦めた身なので、そのあたりに関しては書けません。ゆえに、本記事では進学についてだけ書いていきます。

 

一、自分の興味がどこにあるのかを知る

最終的に求める答えが同じでも、学問においてはアプローチが無数に存在します。したがって、自分の興味の対象に迫る上で、どの側面から探っていくのかを決めることは進路を選ぶ上で最重要の課題の一つです。

自分の話になってしまいますが、わたしは文系と理系の境界の分野に興味があり、進学にあたってどちらに進むかすら決められずにいました。そこで、ひとまずやってみたのが”とりあえず気になったもの全部かじってみる”です。

大学の講義、特に教養科目や大学院の共通科目、「~概論」とついている講義はそれをやるには非常に良いです。例外はありますが、「研究者が」「その学問を語るのに最低限必要な知識を」「最新の内容をまじえつつ」「初学者にもわかるように」教えてくれる講義だからです。わたしは、学内システムのシラバス検索で、自分の興味がある分野に関わるキーワードを検索し、引っ掛かった講義の中で他学部他学科履修可と書いてあるものを片っ端から受講していました。履修する勇気がない場合は履修登録せずに潜ってみてもいいと思います。オンライン講義だと潜るのは難しいですが。

研究内容に重点を置いている大学院の概論系講義は、その分野の研究手法を知る上で特に良いのですが、学部生だと受講できないかもしれないですね…。

大学の講義以外では、興味がある分野の学会が主催している資格の勉強をしました。まとまったテキストがあり、問題形式で知識の確認もでき、さらに試験があるというので気が引き締まって良かったです。ただ、胡散臭い資格も沢山あるので、そのあたりの下調べはしっかりする必要があります。

一応、例として自分が勉強していたものを置いておきます。

www.jsbi.org

jupaken.jp

たぶんそうこうしているうちになんとなく方向性が定まってくるんじゃないかと思います。

 

 

ニ、何を勉強するべきかを知る

良くないテキストで勉強するのは何も生まないどころか有害なので、良いテキストを選ぶところからです。講義で使われているものなら大概間違いないので、興味がある分野の講義でよく使われているテキストを探すのが一番簡単だと思います。

すでに気になっている研究室があるなら、そこの先生や院生に初学者向けテキストを訊いてみるといいです。先生は先生自身の専門性が高すぎて、本当の本当に初心者向けのテキストを紹介してくれないことがあるため注意が必要ですが、興味と意欲があることを伝えることは絶対に無駄にはならないはずです。積極的に連絡を取ったり、講義後に質問しに行ったりしましょう。そこから新たな機会をつかめることもあります。研究室に出入りしている学部生の後輩(後述)も似たようなことを言っていました。院生は先生よりも初学者向けのテキストを知っている可能性があるので、院生と交流するのもおすすめです。

 

三、研究室に連絡をとる

二とも関連しますが、進学にあたりどんな準備をしておけばいいのかを知るために、進学先候補の研究室には早めに連絡しましょう。進学を前提とした相談や質問を邪険に扱う先生はそれほど多くないです。進学を検討するにあたって、自分は五つの研究室に連絡を取りましたが、これまでとまったく異なる分野(土壌の虫→神経科学)であったにも関わらず、四つの研究室は親切に対応してくださいました。

研究室に連絡を取る上での注意ですが、進学まで時間があるのであれば最初は絞り込みすぎず、興味にかすりそうな内容の研究室であれば連絡を取ってみるべきです。例えば、アプローチは自分が考えているものとは違うが、対象種が一緒である、とかです。話を聞いてこれは違うな、と感じたとしても、先生と話をすることで、より興味に近い研究室や先生を紹介してもらえる可能性があります。

ただし、忙しい時間を割いてくださる先生方や研究室の学生さんたちに対する礼儀を忘れずに。

ラボの選び方については検索すればネット上に数多出てくると思うので、自分で調べてみてください。最終的には「入ってみるまでわからない」という結論にはなると思いますが…(わたし自身、まだ新しい研究室のことはわからないのでドキドキしています)。

自分が研究室を探すときは、関連ワードで検索して出てきた研究室のHPや出している論文、プレスリリースを見て候補を絞っていました。修士課程では、院生の外向け論文投稿を前提としている研究室とそうではない研究室があるため、その先の進路で学芸員や研究者を考えている人は、修士で論文を投稿している人がいるか、それが可能なのかはあらかじめ確認しておいた方がいいです。

 

四、研究室に出入りしてみる

※四については一~三に比べると高難易度なので、そういうこともできなくはないというのを知っておいてもらえれば、という程度の気持ちで書いてます。知ってるのと知らないのとでは選択肢がまるで変わるので。

研究室にもよりますが、学部生でも研究室への出入りは可能です。さらに、自分の学科の研究室でなくても研究室のイベントに参加してみたり、セミナーに参加してみたりすることは存外できます。これは知らない人が多いのではないでしょうか。自分は修士課程一年のとき、弊研究室に出入りし始めた学部二年生(後述)に話を聞いてそれを知り、自分も学部時代から動いていればとしばらく落ち込みました。

研究室に出入りすることによって、研究現場の現実を見聞きできるのはもちろん、発表(論文紹介など)の場を与えてもらえたり、場合によっては研究をさせてもらえることもあります。そこまでいけば、順当に志望学科に進学した人と大差ない、もしくは差をつけて院進できますよね。

 

四’、弊研究室に出入りしている他学科の学部生に話を聞いてみた

この記事を書くにあたり、実際に弊研究室(生物学専修)に学部二年生から出入りして研究を始め、わたしに衝撃を与えた後輩の明石君(高分子機能学所属)に話を聞きました。明石君は現在学部三年生ですが、学内シンポジウムでも賞をとっているスーパー学部生です。

高分子機能学3年生 明石涼さんが、第6回北大・部局横断シンポジ ウム ベストポスター賞を受賞 – 北海道大学 理学部 生物科学科 高分子機能学 (hokudai.ac.jp)

スーパー学部生の明石君ですが、実は、総合理系制度で生物科に進めなかった犠牲者でもあります。ですので、別世界の人間なんだ、と思わずに、この先を読んでもらいたいです。彼についての詳しい話は長すぎるので、後日別記事にまとめる予定です。

この記事では、明石君の話の中に出てきた、とりわけ重要だと思った部分だけ紹介します。

 

・気になる先生には積極的に質問やメールをする

(明石君談)先生にメールをするのは失礼なことではないので、気になったら即連絡をとるべき。自分が学部一年生の頃は様々な先生におすすめのテキストを訊いていた。先生が薦める本を読むことで、発信されている研究の中身だけではなく、より広い意味での研究目的や、その研究の位置づけがわかるようになる。例えば、動物生態の先生は「その動物の行動そのもの」を調べているのではなく、「その行動の進化的意義」に興味があるのだ、とか。そういったことを知ることで、高校生の頃に持っていた研究のイメージと、実際にその先生が取り組んでいる研究とのずれを修正できる。直接的に興味に結びつかない研究をしている先生でも、興味に結びつく研究や先生を紹介してもらえたり、何かと興味に結びつくような機会をもらえたりするので、遠慮せずに連絡をとってみたほうがいい。

 

・とにかく行く先々で自分の興味を話す

(明石君談)理由は上と同様。興味に結びつくような機会に巡り合う可能性を高められる。

 

・研究室バイトはおすすめ

(明石君談)研究室によっては実験補助のバイトを募集しているところがある。実験補助のバイトでは先生だけでなく院生の人たちとも深く関わることができ、生の声を聞ける。場合によっては研究室イベントに参加させてもらえたり、セミナーに呼んでもらえたりする。気になる研究室があったら、募集していなくても実験補助のバイトができないか問い合わせてみるのもいいかもしれない。バイトができなくても、研究室のライトなイベントに参加できる機会があれば積極的に行ってみると良い。

 

明石君は、自分が研究したい種を扱っている学内の研究室をネットで探しているときに、偶然見つけた研究室で募集していたバイトに応募し、バイト先の研究室の院生に教えてもらって参加したセミナーで、現在出入りしている研究室の先生と出会ったそうです。 

 

・情報収集にはメーリスが良い

(明石君談)研究に関わるメーリスに登録することで、一般に開かれたオンラインセミナーのお知らせなど、役に立つ情報を得ることができる。例えばjeconetなど。

 

明石君に聞くまでわたしも知りませんでしたが、「生物研究 メーリス」などで検索すると色々出てきます。すごい。

また、博士の院生の方に訊いたところ、そういったメーリスでは公募情報なども流れるため、研究に携わる気があるのであればメーリスへの登録はかなり重要なんだとか。

 

 

五、最後に

ここまで、どう動けば学科移行の失敗を軌道修正できるのか、できる限り簡潔かつ具体的に書いてきたつもりです。こんなの少し考えればわかることじゃん、と思った人がいたらごめんなさい。この記事は、それがわからず、相談できる相手もおらず、サークルや遊びで学問に打ち込めない虚無感を紛らわせていた、過去の自分への供養みたいなものです。考えて自力で動ける人、自信を持って今後も進んでいってください。相談できる相手がいる人はその人を大事にしてください。

 

最後に、精神面の話をします。

学科移行に失敗してからの自分は本当に無気力でした。本当は勉強が好きだったわけじゃなかったんだな、高い学費を出してもらってこんな体たらくで申し訳ないな、と学科移行後の三年間ずっと鬱々としていました。こんな記事を書く日が来るなんて夢にも思っていなかったし、自分のことをクズだと本気で思っていました。

しかし、環境が変わったら心境も行動も大きく変わりました。心は置かれた環境で容易に変化します。それを身をもって知りました。頑張りたくても頑張れない環境というのはあります。どうか、自分を責めすぎず、自分が頑張れるフィールドを見つけてください。

総合理系は残酷な制度です。大学の成績は、先生によって評価方法が大きく異なっています。受験とは違い、その評定には運要素や不平等な部分が結構あります。しかし、それを理解してくれる人はそう多くはありません。移行失敗は受験で滑ったのと同様すべて自業自得とされ、その苦しみはしばしば冷たくあしらわれます。

それでも腐らずに今できることをやるしかありません。

この記事がその「今できること」を少しでも提示できたらうれしい。

楽しい学部生活を送れる人がすこしでも増えることを祈ってこの記事を締めます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

おしまい。