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【研究日記】D1 ノーデータの夏

後々学生生活を振り返るために書いておいた方がいいだろうと思いながらも書けずにいたD1前期の日記です。

 

タイトルの通り、メインテーマについて自分はここまでノーデータです。

理由は色々ありますが、一番は博士に入ってから始めた無菌操作に自分が致命的に不向きで、最も重要な神経細胞を使った実験の結果が安定して出せないことにあります。

非常に情けないことですが、今回この日記を書く時間ができたのは、予備実験が上手くいってやっと本チャンの実験に入れると張り切って仕掛けた神経細胞コンタミで半分死んでしまい、この二日間でやるはずだった実験がパァになったからです。

日記を書くほかにやることはいくらでもあるのですが、ようやく結果が一つ出せると安心した矢先のことなのでゲロ落ち込んでしまい、気分転換に自分のための文章を書くことにしました。

 

「こんなにコンタミをする学生を今までに見たことがない。もう神経細胞の実験は諦めた方がいいんじゃない?」

 

とまで言われているのが自分の現状です。言われたのはまさに今日です。

この四ヶ月、神経細胞播種のたびに実験動物を殺す上に培養の失敗でその命を無駄にしてしまうこと、前期が終わったのに一個のデータもなくオーバードクターの文字が頭にチラつく状態に疲れ切っていたので、この実験以外で修了できるならそうしたいです、と答えました。「神経細胞以外の細胞での実験でも修了するだけなら簡単。ただしIF5以上の雑誌には出せないよ」と言われました。

今の時代、もし今後もアカデミアに残り、研究者として生きていくのなら博論で高IF の雑誌に出さないとだめなのだそうです。先生は叱咤激励のつもりでそう言ったのだと思いますが、このセリフでかえって元気が少なくなってしまいました。自分は博士進学前からアカデミアに残りたいとそこまで思っていません。指導してもらえなくなることを恐れて先生にはっきりとは言えていませんが、雇用や研究費の不安を常に抱えながら人に指導をしつつガツガツ自身の業績を重ねていくという生き方は自分には向いていないだろうと考えています。学位を取って研究に関われる職につければ肩書は研究者でなくてもいい…。修士の研究室の理系就職実績があまりにも悪く、また、面接が極めて苦手であるために今のままでは研究に関わる民間職には就けそうにない、と進学を決めました。少なくとも今のわたしには高IF より修了のほうが大事であると感じます。

 

とまあここまでを見ると「おしまいか!?」という感じがするのですが、この状況でも「まだコンタミの原因になりうる場所はいくらでもあるし、来週の実験の際にはわたしが実験操作の様子を見て逐一注意します」と言って先生はいくつかアドバイスしてくださったので、見捨てられてはいないようです。これだけ不出来でもちゃんと面倒を見てくださる良い先生・研究室に巡り合えたと思っています。何とかこの好機を活かしたい。来週付きっきりで実験操作の様子を見られるのには怯えていますが、修論すらもほとんど読んでもらえなかった前の研究室では、たとえ同じ状況になっても確実にそんな風にはしてもらえなかったのでありがたい限りです。

 

さて、ネガティブなことばっかり書きましたが、四月以降に書いた記事を見てもらえればわかるように、今のところ博士後期課程は自分のデータが無いこと以外は楽しいです。興味ど真ん中の分野に来たので今まで趣味でしかなかった分野の勉強がすべて研究に繋がるようになり、罪悪感を持たずに好きなことを学べるようになってとても幸せです。また、今いる研究科では、大学を離れてからが長い社会人ドクターや本格的な論文を書いたことがない学生が多いため、かなり丁寧に基礎的な研究のお作法を教えてくれます。その辺りに関して碌な指導がないままにやってきた身としてはありがたみの極致といった感じです。修了できなかったら北の大学に逃げ帰ろうかな、と半分冗談半分本気で言っていますが、大学を移ったこと自体は後悔が無いです。これでちゃんと修了できれば文句無しなのでどうにかしたいところ。

 

 

以下は今日言われた実験操作以外でのコンタミリスク回避方法のメモ。

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ピペットマンをばらして掃除。O-ring がすり減っていたら取り換える(安価なので)

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ギルソンピペットマンパーツの説明。アスクルのHP(https://axel.as-1.co.jp/asone/d/64-0979-97/)から引用しています。

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メディウムを温めたりする際に使用するウォーターバス周りはごちゃごちゃさせない。

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ウォーターバスの水はウォーターバストリートメントなどを使い、きれいに保つ。

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インキュベーター上・内部の埃は掃除する。


日記を書いた後、先生のアドバイスにしたがってウォーターバスを洗ったらあまりにも汚くて阿鼻叫喚の有様でした。謎の泥のような赤いヌメヌメやら変質した髪の毛らしきものやら…逆にこれでコンタミせずに実験できるのがすごいのでは?と思ってすこし元気が出たくらいです(?)

わたしが発狂していたら直属の先輩が途中から手伝ってくれました。WORKING‼ のポプラちゃんを彷彿とさせる可愛らしくて優しい先輩で、研究生活の数少ない癒しです。先輩は一学年上の医学系で四年間の課程なので二人とも予定通りいければ同時に修了です。何としても一緒に出たいところ。は~!!がんばろう…。

 

 

おしまい。